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2024.01.17

第1回 こども基本法から生徒のエージェンシーを考える|Web月刊高校教育 高校教育を探究する!

この連載について

高校教育を取り巻く状況が大きく変わっています。そうした中、この先、どうやって魅力ある、特色ある高校に変わっていったらよいのか。中教審委員なども歴任し、高校教育界を牽引する田村知子さんと岡本尚也さん、お二方と共に「探究」していきます。
※本連載は田村さん、岡本さんに隔月交代でご執筆いただきます。

 年明け早々、北海道高等学校教育経営研究会にお招きいただき、生徒エージェンシーについての講演をしました。私にとって、この演題は初めてでしたが、参加された管理職や教員の皆様は熱心に耳を傾けてくださり、共に有意義な議論ができました。同研究会がいち早く注目された通り、生徒エージェンシーは、これからの高校教育を考える上で重要な論点になると思われます。OECDは生徒エージェンシーを「目標を設定し、振り返り、効果的な変化に向けて責任感をもって行動する能力」と定義しています。

 さて、エージェンシーを育む方法はいろいろありますが、その一つは、生徒の声を聴くことでしょう。英語圏には、student voiceという研究概念があります。また、生徒の声を聴くことは、2023年4月1日に施行された「こども基本法」にも謳われています。

こども基本法が保障する「子どもの意見の尊重」

 日本は、1994年に「子どもの権利条約」に批准しましたが、これまで当条約に対応した包括的な基本法も省庁横断的な行政組織もありませんでしたので、これは画期的だと考えます。もちろん、背景には加速する少子化や子どもの貧困、虐待、いじめといった、深刻かつ待ったなしの厳しい現実があるわけですが。

 こども基本法は、「子どもの権利条約」が掲げる4つの原則(「差別の禁止」「子どもの最善の利益」「生命、生存及び発達に対する権利」「子どもの意見の尊重」)を踏まえた基本理念を掲げています。本稿では、私が研究関心を寄せ続けてきた「子どもの意見の尊重」に着目しようと思います。「こども基本法」の第3条には次のように理念が謳われています。

三 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。
四 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。

頼もしい生徒たち

 これまで、私は、小・中・高等学校の現場で、生徒の意見に真剣に向き合い、その成長ぶりに目を細める先生方、生徒の意見を授業や学校改革に活かす学校の実践に出会ってきました。

 あるスーパーサイエンスハイスクール(SSH)*1指定校で、生徒会を中心に生徒たちがSSH科目を中心としたカリキュラムを検討する場に立ち会う機会がありました。生徒たちは、教員が定めたディベートのテーマについて多角的な観点から賛否を議論し、改善案を提案していました。教科の授業で「穴埋めプリント」が与えられることが多いけれど、「白い紙」の上でしっかり考えたいという発言も飛び出し、驚きました。最後には、「先生方に要望を述べるだけではいけない」「自分たちも学習を改善するために、ここに集まった私たちから行動を起こそう」とまとめていました。意見を述べることの責任をしっかり自覚した頼もしい生徒たちでした。

 新型コロナウィルス感染症拡大のため、多くの学校行事が中止や縮小を余儀なくされた時にも、生徒たちが感染防止策を講じた学校行事のあり方を先生方と一緒に考え抜き、提案し、実行したという学校の話をいくつか伺いました。このような事例は、もちろん先生方の注意深く丁寧な指導や支援があってこそ実現したわけですが、実践に取り組んだ先生方は、生徒たちを、授業づくりや学校づくりのパートナーだとおっしゃいます。

生活や人生の一部

 授業や学校行事は、生徒にとっては生活そのものあり、大切な人生の一部です。それに対して意見を言ったり、提案したりすることは、まさに自分の生活や人生へのエージェンシーの発揮であり、それを育む学びでもあります。高等学校に通う生徒たちには、法律上成年に達した者でなくても内面的に十分「おとな」な生徒たちもいます。生徒たちの声に耳を傾けることにより、生徒たちに、責任を学び、生き方を考え、自信を深める機会を設けたいものです。


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