この連載について
この連載では、2022年12月に改訂された『生徒指導提要』や、国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターで行っている学校風土といじめに関する調査研究などをご紹介していきます。広く、学校で働く教職員、保護者、地域の皆様にお読みいただきたいです。なぜなら、子どもの総合的な発達は、学校や家庭、地域を子どもたちがどう認識し、経験しているかが重要になるからです。そのために、生徒指導が果たす役割、機能はとても重要なのです。

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この連載では、2022年12月に改訂された『生徒指導提要』や、国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターで行っている学校風土といじめに関する調査研究などをご紹介していきます。広く、学校で働く教職員、保護者、地域の皆様にお読みいただきたいです。なぜなら、子どもの総合的な発達は、学校や家庭、地域を子どもたちがどう認識し、経験しているかが重要になるからです。そのために、生徒指導が果たす役割、機能はとても重要なのです。
2024年3月に国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターから『「生徒指導上の諸課題に対する実効的な学校の指導体制の構築に関する総合的調査研究(令和2・3年度調査)」最終報告書』(以下「最終報告書」)が刊行されました(報道発表は2024年4月23日)*1 。最終報告書は、以下の国立教育政策研究所のHPから無料でダウンロードすることができます。
「生徒指導上の諸課題に対する実効的な学校の指導体制の構築に関する総合的調査研究」(以下「学校指導体制調査研究」)は、中学校40校の生徒と教員(常勤)を対象に、2019年度に1回、2020年度と2021年度にそれぞれ2回、計5回の質問紙調査を実施したものです。2019年度はパイロット調査として実施したため、上記の最終報告書は2019年度を除いた、2020年・2021年度の計4回の質問紙調査から得られたデータを分析しています。比較的規模の大きい調査といえ、4回にわたる調査では、毎回18,000人弱の生徒、そして、1,000人弱の教員から回答を得ています。
この「学校指導体制調査研究」は、日本の中学校を対象とした学校風土研究といえます。使用されている調査票は、生徒指導・進路指導研究センターで議論を重ねて作成したものですが、米国カリフォルニア州教育省とそのシンクタンクであるWestEdが開発した学校風土の調査票(California Healthy Kids Survey)を参考にしています。
「学校指導体制調査研究」では、生徒指導の成果の一つとして、生徒の学校への愛着や所属意識である「学校とのつながり」(School Connectedness)を仮定しています。この「学校とのつながり」は、学校風土の重要な構成概念の一つとされています。
「学校指導体制調査研究」と米国カリフォルニア州の学校風土調査における「学校とのつながり」の項目をそれぞれ比較すると以下です(表1)。学校生活での安心や安全といった居場所感、学校への好感が主な質問項目になっているといえます。

それでは、この「学校とのつながり」を生徒に育むことには、どのような意義があるのでしょうか。最終報告書では、生徒への調査の結果から、「学校とのつながり」を育むことが生徒指導上の課題の未然防止、特に、いじめの加害の抑止に関連するか、検証されています。
また、もし「学校とのつながり」を育むことが、いじめの未然防止になりうるとすれば、それはどのようにして生徒に育むことができるのか、特に、生徒指導上、教員の意識や努力で変わる要因について、仮説に基づき検証されています。
分析の結果、4回の調査のいずれも、「学校とのつながり」が高いほど、以下の8項目すべてのいじめ加害経験がないことがわかりました。つまり、「学校とのつながり」を育むことが、いじめ加害の抑止につながることが明らかになったのです。
| いじめ加害経験(8項目) |
|---|
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そして、「学校とのつながり」を育むうえで、生徒指導上、教員が留意する必要のあることとして、生徒が教員に対してあたたかみや思いやりを実感していること(「教師支援」)や、教師が自分を守ってくれる存在であると認識していること(「保護的規律」)が見出されました(図1)*4 。

上記に関する生徒の認識が肯定的に変化することで、教室の学習環境が良好なものとなり、それによって、役割活動への責任感や他者の尊重といった社会的態度・行動の育成に影響し、結果的に「学校とのつながり」の意識が醸成されることが示唆されたのです。
つまり、生徒指導として、「学校とのつながり」を生徒に育み、いじめの未然防止に取り組むうえで、重要であるのは、生徒が、学校や学校にいる大人をどのように認識しているかに着目するということです。そのため、生徒の学校や教職員に対する認識をより肯定的なものに変化できるように、教職員間で生徒指導の取組を振り返り、継続的な改善を図る手立てや工夫が、大切になるといえます。
なお、学校風土に関する調査には注意すべき点がいくつかあります。例えば、学校風土の測定には、生徒による学校や教職員評価の側面があるため、記名式はそぐわないことがあります。また、学級単位で、学校風土(この場合は学級風土)を測定する場合、学級担任に対する不公平な評価(例えば、管理職による教員評価に使われる等)につながる場合があり、教員間でお互いをサポートするといったチーム形成に向かわずに、教員同士が競い合う文化が生まれる場合もあります(得てして、教員一人ひとりが置かれている状況を踏まえず、過去から現在までの生徒の変化を加味せずに、ある一時点のみで評価を行うことは不公平なものになることがあります)。学級風土の結果をよくするために、教員が難しいと感じている生徒を学級から排除しようとする力学が働かないとも限らないのです。学校として、学校風土を学級レベルまで明らかにしようとする場合は、その意義と注意点をよく確認し、どう活用すれば、生徒指導の継続的な改善につながるか(教職員同士で同僚性を育み、建設的なフィードバックプロセスを生み出せるか)といった視点をぶれさせずに、協議し、合意形成していくことが求められます。


