この連載について
この連載では、2022年12月に改訂された『生徒指導提要』や、国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターで行っている学校風土といじめに関する調査研究などをご紹介していきます。広く、学校で働く教職員、保護者、地域の皆様にお読みいただきたいです。なぜなら、子どもの総合的な発達は、学校や家庭、地域を子どもたちがどう認識し、経験しているかが重要になるからです。そのために、生徒指導が果たす役割、機能はとても重要なのです。

この連載について
この連載では、2022年12月に改訂された『生徒指導提要』や、国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターで行っている学校風土といじめに関する調査研究などをご紹介していきます。広く、学校で働く教職員、保護者、地域の皆様にお読みいただきたいです。なぜなら、子どもの総合的な発達は、学校や家庭、地域を子どもたちがどう認識し、経験しているかが重要になるからです。そのために、生徒指導が果たす役割、機能はとても重要なのです。
生徒指導は、適切な児童生徒理解に基づき行われる必要があります。児童生徒理解とは「児童生徒を心理面のみならず、学習面、社会面、健康面、進路面、家庭面から総合的に理解していく」*1ことです。そのためには、教師をはじめ、それぞれの専門職が自らの専門性をもとにアセスメントを行い、児童生徒を多面的、多角的に理解できるように、それらの情報を共有、検討していきます。
『生徒指導提要』では、このアセスメントについて「チーム支援において、当該児童生徒の課題に関連する問題状況や緊急対応を要する危機の程度等の情報を収集・分析・共有し、課題解決に有効な支援仮説を立て、支援目標や方法を決定するための資料を提供するプロセスのことである。」*2と定義しています 。
このように述べると、児童生徒理解のために行われるアセスメントとは、何か特別なニーズないしはリスクを抱えた一部の児童生徒に対して実施するものと思われるかもしれません。実際に、精神医療や心理臨床の分野では、特定の対象者について、発達特性や知能、パーソナリティ等、実に様々なアセスメントが開発、使用されています。
ですが、児童生徒の社会性や情緒、学力、身体といった総合的な発達に寄与する「学習環境の質」に関するアセスメントは、学校の教師が担う重要なものであり、全ての児童生徒を対象にする必要があります。
教師が行うこの「学習環境の質」に関するアセスメントとは、決して真新しいものではありません。むしろ、多くの学校で、例えば、「この学校が好きである」、「この学校の一員であることを誇りに思う」、「みんなで何かをするのが楽しい」、「授業が面白い」など、様々な質問項目で児童生徒に定期的に、アンケートを取って、日々の生徒指導や授業の改善に活用していることでしょう。これらの項目のほかに、いじめの被害と加害の経験なども入れて、いじめアンケートとして使用している学校もあるでしょう。
良好な学習環境、すなわち、学校風土の形成は、先に述べたように児童生徒の総合的な発達に寄与するため、発達支持的生徒指導を通して、学校はその維持・改善に努める必要があります。
国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターで行われた「生徒指導上の諸課題に対する実効的な学校の指導体制の構築に関する総合的調査研究」(以下「学校指導体制調査研究」)は、中学校を対象とした学校風土に関する研究ですが、この研究を通して開発された調査票は、発達支持的生徒指導がどれほど機能しているかの測定を試みるものです*3。そのため、教師がアセスメントに基づく生徒指導を進めるうえで、その一助となります。使用されている調査票は、信頼性だけでなく、いじめの未然防止という観点から妥当性も検証されています。
以下に、「学校指導体制調査研究」の調査票から、いじめ加害経験のなさに関連する生徒指導の成果の一指標と見なすことができる生徒の学校への愛着や所属意識を意味する「学校とのつながり」の4項目と、「学校とのつながり」を育むために、教師の努力や意識の注力で変容可能な学校保護要因である、生徒と教師との思いやりやあたたかみのある関係性に関する「教師支援」の5項目、そして、安心・安全に関する「保護的規律」の4項目の合計13項目を以下に掲載します(表1)。
これらは、生徒指導の成果とともに、生徒指導の取組の充実・改善のために教師が活用できるフィードバック情報を提供する必要最低限の質問項目であり、肯定的な回答をしている児童生徒が多ければ多いほどよい概念であるため、結果の解釈も非常に簡単な設計となっています。
これは、発達支持的生徒指導の機能の測定を試みた国立教育政策研究所による学校風土アセスメントツールモデルのプロトタイプといえるもので、今後、研究を通してさらに充実、改善を図っていく予定です。
なお、今回紹介した学校風土アセスメントツールは、あくまで児童生徒理解をしていくうえで、一側面からの情報を測定しているにすぎません。教師が行うアセスメントには、行動観察などの観察法による方法もあります。面接法に該当する教育相談としての個別面接などもあります。学力に関する試験やパフォーマンス評価も重要なアセスメントです。このように、教師の専門性を生かしたアセスメントは、多くあり、どれも児童生徒理解を深めるうえで、重要です。学校風土のアセスメントツールの情報は、むしろ、教師の実践知、経験知を補完するものと捉えるとよいでしょう。
さらに、学校風土のアセスメントには、いくつか留意すべきこともあります。例えば、その一つに頻度が挙げられるでしょう。自記式のアンケート調査の回数が、多ければ多いほどよいとは、限りません。例えば、同じアンケート調査を毎日行うと児童生徒はどう思うか、実施する側は想像を働かせる必要があります。自記式のアンケートで測ろうとしている何かは、血圧や体重の測定とは異なるものです。児童生徒がそのアンケートをどのように捉えているか(例、どうせ書いても何も変わらない、またこれを書くのか面倒だな)、また、教職員との関係性(例、これを書くとその後、どのような扱いをされるのか心配)も影響する可能性があります。例えば、3学期制であれば、学期に1回(年3回)程度、学校風土に関するアンケート調査を行い、生徒指導の充実・改善を目指すという方法もあるでしょう。学年団がその情報をもとに、課題やビジョンを共有し、「よし皆で、生徒指導の充実、改善のために一歩を踏み出してみよう!やってみよう!」と思えるような、頻度を検討することが大切です。
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