2024.12.04

第12回 教育活動としての大掃除|Web学校事務「事務職員と“学び”、事務職員の“学び”」

この連載について

全事研の役員となって事務職員の育成や成長ということを考える中で、学ぶことの重要性を強く認識しているところです。もちろん、体系的な研修制度も資質・能力を身に付ける上で大事ですが、まずは事務職員自身が主体的に学び、学んだことを生かして試行錯誤を繰り返していくことが必要だと感じています。「子どもの豊かな学びのためにも、事務職員として学び続けていきたい」。そんな思いで、私自身の経験から“学び”について考えたことを綴っていきます。

年末といえば

 年末と言えば、何を思い出すでしょうか。いろいろあるでしょうが、“大掃除”を思い浮かべる方も多いことでしょう。積極的に行う方も多いですし、必ず障子を貼り替えるという方も多くいます。私はできることなら、その話題には触れずにおきたいと思ってしまうほうですが(だったらここで取り上げるなという感じですね)。そして、学校においても、大掃除週間などの形で、日ごとにポイントを絞って掃除をしたりしますよね。

 なんとなく予想通りですが、年末に掃除をするというのは日本だけの文化のようです。その由来は煤払い(すすはらい)とのことです。そう、昔は家の中に囲炉裏やかまどがあり、家の中が煤だらけになったためで、ならば、現代では必要ないかとも思うのですが、そこには、風習という概念も織り込まれ、家をきれいにして、新しい年を迎えるにあたり年神様を敬うことを象徴しているのでしょう。

学習指導要領にも大掃除が

 ところで、試しに小学校学習指導要領解説を紐解いてみました。すると、“大掃除”を2つ見つけることができました(もっとあったらごめんなさい)。特別活動編の中の、学校行事の部分では、「一般的に行われている大掃除は、健康安全・体育的行事として取り上げられる場合もあるが、特に勤労面を重視して行う場合は、勤労生産・奉仕的行事として取り上げることも考えられる」と記されています。

 少し付記すると、“健康安全・体育的行事”とは、「心身の健全な発達や健康の保持増進、事件や事故、災害等から身を守る安全な行動や規律ある集団行動の体得、運動に親しむ態度の育成、責任感や連帯感の涵養、体力の向上などに資するようにすること」で、“勤労生産・奉仕的行事”とは、「勤労の尊さや生産の喜びを体得するとともに、ボランティア活動などの社会奉仕の精神を養う体験が得られるようにすること」を指します。

教育活動としての清掃

 では、日々の清掃はどのように捉えられているのでしょうか。学習指導要領解説特別活動編では、“社会参画意識の醸成や働くことの意義の理解”として、“清掃などの当番活動や係活動等の自己の役割を自覚して協働することの意義を理解し、社会の一員として役割を果たすために~”と示されています。もちろん家庭科の住生活の部分では、その必要性や具体的な方法なども学ぶものとされています。

 これに加えて、明文化はされていなくとも、基本的生活習慣の習得や、自分たちが使う場所を大切にする意識の醸成と言った意味も持たせていますよね。と同時に、一般的な学校以外で行う清掃の目的である、綺麗に、清潔にすること、さらには感染症を防ぐためなどの目的では行われていないことが分かった気がしませんか。

 ところで、児童生徒が清掃を行う国の方が世界的には少ないそうです。中でも、教育活動として清掃を行っている国は他にはなかったとも聞いたことがあります。さらに、アメリカでは児童生徒が学習に集中するために、掃除の専門家を雇っており、その他の者が清掃を行うことは職務領域の侵害とまで捉えられるなんてことも聞いたことがあります。

清掃用具の見直しも

 さて、そんな清掃の意義を再確認した私としては、学校の環境が気になってしまいました。学校で使う清掃用具と、自宅で使う清掃用具があまりにも違っています。おかげさまで我が家の掃除機は、吸引力の変わらない有名なヤツです。また、ちょっとした床のほこりや汚れは使い捨てのフローリング用掃除シートを使っていますし、トイレ掃除に使用するシートも使ったら流せるものに変えました。では、学校はどうでしょうか。清掃用具については私の採用当時からも、大きな変化はないように思います。基本的生活習慣の習得を目指すなら、もう少し現在の家庭や社会の環境に、近づけていくことも検討しなければいけないでしょうか。

 ところで、私がまだ働き始めたばかりの頃、清掃の時間になると児童が事務室にやってきました。冒頭にも書きましたが、そもそも清掃が得意ではない私は、何を指導すれば良いのか、大いに戸惑ったものです。でも、しばらくして児童と一緒に(なかなかやってくれないのですが……)掃いたり、拭いたりをしていると、床などがきれいになると同時に、なんだか私の気持ちも晴れてきたのを思い出しました。

 この年末は私も事務室の大掃除をしてみようかと思います。きれいな環境で新年を迎えましょう。

 みなさんも良いお年をお迎えください。

 

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前田先生からコメント

 事務職員の標準的な職務にも示された学校教育におけるICTについて、事務職員の視点から捉えた書籍『教育ICTがよくわかる本』の発行に携わらせていただきました。それぞれに現場で実践されている事務職員の素晴らしい取組も載っています。学校の現状や、取組の背景、うまくいったこと、うまくいかなかったこと、取組を通して実践者が学んだことなど、読み手にとって考えを広げてくれる本であると強く感じています。事務職員のみなさんの学びのきっかけとなること、そして、事務職員以外の方々には、事務職員との協働や、事務職員の活用を促進していただくきっかけとなることを期待しています。


全国公立小中学校事務職員研究会 会長。埼玉県嵐山町立玉ノ岡中学校事務主幹。1967年生まれ。事務職員としての職務の傍ら、全国公立小中学校事務職員研究会(全事研)研究開発部長、副会長等を歴任し、2023年8月から現職。共編著に『スクールファシリティ・マネジメント――「学びの環境デザイナー」としての学校事務職員』、『教育ICTがよくわかる本――総務・財務をつかさどり、教育支援を進めるためのICT活用』(ともに学事出版)。
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