『月刊生徒指導2025年2月号』では、特集『「問題行動・不登校」の現在地』と題して、多角的にこの問題について論じました。学校での問題行動・不登校について、学校現場の先生方はどのような実感をお持ちなのでしょうか。
今回は匿名アンケートという形で、21名の先生方に、現場で感じていることを率直にお書きいただきました。雑誌で掲載しきれなかったもの含めてアンケート回答の全文と、専門家の視点として、犯罪心理学の視点から問題行動や少年非行について研究する、摂南大学全学教育機構助教の西村晃一さんからのコメントを加筆したものを特別公開いたします。
Q1.本調査結果で示されたそれぞれの生徒指導上の諸課題(いじめ・不登校等)に関して、学校現場で増加や困難化を実感していることはありますか?
不登校に関する回答が多数
- 不登校生徒(欠席日数10日以上の生徒や標準授業時数20%以上の欠課を有する生徒)の著しい増加。(30代、高等学校)
- 不登校生徒の長期化、状況の多様化とSNS等ネットいじめの深刻化を実感している。(60代、中学校)
- 不登校の生徒対応について問題や対応が複雑化している。(50代、高等学校)
- 不登校や教室に入りにくい児童の支援。(30代、小学校)
- 同一クラス内で複数の生徒が不登校になる場合が出てきており、担任・副担任だけでは物理的に対応できなくなっている。(30代、高等学校)
- いじめの定義として被害児童がいじめと言ったらいじめになるが、加害側や周囲の様子を聞いても、事実が異なった時に被害児童に寄り添う難しさ、今回の事案は本人から直接聞くことができず、母親がいじめであると断定し学校も認めざるを得なかった。実際は、学習での困難さ、友人関係が少ない、担任との相性など様々なものが重なった時に殴られたことをいじめといっているのではないかとおもう。(20代、小学校)
いじめ対応の困難化についても複数の声
- いじめを認知することがゴールになり、解消に向けての見守りが形骸化している。(40代、高等学校)
- いじめについてですが、被害者側の立場や言い分に寄り添いすぎているように思います。例えば、いじめの被害者側が心療内科を受診し、警察に相談し裁判を起こすなど、被害者側の意見が聞き入れやすいようにように感じています。
不登校に関しては、教師を続けていく中で、件数が年々増加していることは、事実です。しかしながら、いじめの問題にしろ、不登校の問題にしろ、子ども達のソーシャルスキルはかなり低下していて、いじめや不登校の問題と大きく起因しているように思います。(30代、中学校)
子どもたちの変容、社会の変容?
- 通信制高校生徒が確実に増大している感覚がある。(20代、高等学校)
- 突然学校を逃げ出す生徒が増えた。(50代、高等学校)
- 保護者の価値観はもちろん、教員の価値観が多様化している。また、多様化していることを認めなくてはいけない風土があり、方向性が見えにくくなっている。(50代、小学校)
- 生徒自身が自分のことが分からない。言葉に出来ない。親が思い込みで本人以上に話してしまうので、子どもは考えなくなる。(40代、中学校)
- SNSを使用するサイトが多く、教員や保護者の見えないところでのトラブルが多発している。学校に対応を求められるが、根本的な解決には至らず、保護者から不満に思われる事案が多い。(40代、中学校)
- 発達障害の子どもによる問題行動、SNSによるトラブル。(40代、中学校)
- 低学年からのいじめや不登校の増加が見られる。その要因として、児童の様々な生活背景や多様化により、学校教育指導の困難さを感じる。幼少期から様々な生活経験不足により、失敗が怖く不安を強く感じてしまうことから、学校生活に適応できず行き渋りや不登校になるケースが見られる。また、ゲームやSNSなどから日常的に暴力的なシーンが身近にあり、善悪の判断をつけることができず真似をしてトラブルになる事案が多い。(40代、小学校)

摂南大学全学教育機構 助教
西村 晃一
生徒指導上の諸課題に対して、増加していると実感した教員は多いようです。これは、文部科学省の調査からも裏付けることができます*1。例えば、いじめの場合、全体の認知件数は約43万2千件を超えています。不登校児童生徒数も小中学校で約36万4千人と過去最多であることから、憂慮すべき状況と言えるでしょう。
では、なぜ増加の一途をたどっているのか。ここを紐解くことで解決の糸口が見えそうです。不登校に着目してみると、まずは「教育機会確保法」を理解することが第一歩となり得ます。文部科学省は、「不登校は問題行動ではありません」と宣言しており、教育機会確保法の基本的な考え方を8つのポイントで示しています*2。その中でも「学校内外の学びの場も整備」を重点目標にしており、相談や学習の場等、保護者の方を支援する様々な制度やサービスが設けられております。
しかし、不登校児童生徒数のうち学校内外の機関等で専門的な相談・指導等を受けている割合は約60%に留まり*1、情報が末端まで浸透していないのが現状です。まずは、関係機関等のリソースを把握し、保護者と一体となった上で、学校復帰ではなく社会的自立を目指した支援が必要ではないでしょうか。
Q2.生徒指導上の諸課題に関する調査結果に関連して、現場の生徒指導で困っていることがありましたら教えてください。
保護者対応の難しさについての回答が多数
- 保護者の顔色を窺いながらの、生徒指導が難しいです。生徒指導をするときに、保護者から苦情が入らないように苦慮しています。(30代、小学校)
- 保護者の無理解。(40代、小学校)
- 保護者の価値観の違いがあり、理解が得られないことが多くなった。(50代、小学校)
- 子どもは指導に乗り反省してくれるが、親が家庭でどう話したら良いかわからないこと。(50代、高等学校)
- 保護者と協働関係が難しい事例、複合困難の理由が家庭環境の問題が多い場合。(50代、教育委員会)
- 厳しく叱ることが出来ないこと。よく言われることですが、教員の立場が弱く、子どもが指導の中で落ち度があると、保護者を通して非難されます。保護者が子どもを守りすぎで、(時には先生を敵に回すことで、保護者の威厳を守っているようなところもあり)保護者の理解のもと指導にあたることは難しいです。(30代、小学校)
不登校児童生徒の対応の難しさも
- 長期欠席者の生徒の事由の多様化、対応の複雑化。単位認定に基づく課題に関して、例えばこの生徒には教科からの連絡は可能、この生徒は担任を通して……など。学内の問題かもしれないが、程度に軽重があり、頑張ってでも単位を取らせる生徒、無理しない生徒、など、生徒一人ひとりの状況に合わせた対応をしていこうとすればするほど、多様化、情報過多の傾向がある。またそれを整理する、担任、養護教諭、カウンセラー、保護者対応窓口(管理職、学年主任など)多くの教員が対応に関わる……。(50代、高等学校)
- 不登校や教室に入りにくい児童への支援体制が整っておらず、担任の大きな負担になっている。(30代、小学校)
- 不登校生徒に対する指導。(30代、高等学校)
- いじめによる不登校支援、保護者対応。(20代、小学校)
- 不登校生徒の増加。集団に適応できない生徒が増えてきているように感じます。(40代、中学校)
見えづらい、対応しづらいネット・SNSのトラブル
- 盗撮や誹謗中傷を含めたネットいじめの対応、広範囲かつ深刻な対応が必要である(60代、中学校)
- 共有すべき情報と、保秘すべき情報の線引きがむずかしい。(40代、高等学校)
- 発達障害の生徒の増加及びその保護者の子どもの状態に関する理解が極めて希薄。SNSによるトラブル。SNSに起因するものは家庭の責任で本来、学校が携わるものではない。SNSによるトラブルは警察に訴えて頂きたい。モンスターペアレントの増加。(40代、中学校)
- 学校外でのトラブル(習い事、SNSなど)への対応。事実が見えづらい、証拠がわかりにくい中で、事情を聴き指導内容を保護者に伝えるが、なかなか保護者の理解が得らない場合がある。学校での解決を求められるが、保護者の期待と学校に出来ることの差が大きいため、指導に困難を感じる。(40代、小学校)
その他
- 生徒指導が全日制を軸に捉えられている。(20代、高等学校)
- 令和の生徒指導の方法を教員が知らないこと。保護者との関係構築が出来ない教員が多すぎる。(40代、中学校)
- 様々なトラブルへの初期対応が教員によって異なり、ケースによっては重大化してしまうことがある。個々の教員の経験や感覚に任せるのではなく、組織として一貫した指導体制を確立することが必要であると考える。(40代、小学校)
- 自由な校則や自由進度学習など、子どもたちに選択肢を与える風潮があるのですが、自由に子どもたちに選択させることに個人的には大賛成ですが、自由ばかりが先行し、責任の取り方を学ばないのが現状と感じています。自由に選択と言いながら、学校のタイムスケジュールは変わらず、学級単位での授業が当たり前です。単位制にし、学級という概念も解体しなければ、自由な選択は難しいと思います。
現状私の学校では、ある意味生徒は自由にしています。朝学活や終学活には参加せず、出たい授業だけ参加し、携帯電話や服装頭髪などの身だしなみ指導もほぼ出来ない状態なので、私服で学校に来て、面白くない授業では携帯電話やタブレットで遊び、学級を飛び越えて色々な教室に入り込んだり、廊下や中庭でたむろしています。時間も意識しません。自由だなと思います。その代わりに成績はついてこず、進学に影響が出るのですが、高校入試も現状少子化の影響で入学ができるため、受験の重しもありません。
自由にさせること、選択肢をたくさん用意することはとても大切ですが、判断材料や自律心を養えていない状態での、自由はただの無法地帯です。(30代、中学校) - 道徳やモラル面まで学校で指導することが多く、家庭でのしつけが全くできていない。(40代、高等学校)
- 最近はいじめられている「ような気がする」という不安からくるものが多い。また、学校へ行きたくない理由が色々あったとしても、嫌な人がいる、嫌なこととをされたから行きたくないということを親に伝え、休む子どもが増えている。「いじめが原因で欠席」という重大事案に近しい理由で休みをとる子が増えてきた。(40代、小学校)

摂南大学全学教育機構 助教
西村 晃一
昨今、教員が困難を抱える「保護者対応」と「ネットトラブル」。この点に関しても、なぜ難解と捉えてしまうのか。まずは、その原因に至る背景を読み解くことが目下の課題です。
共通して言えることは、「ストレス」が根底にあるのではないでしょうか。例えば、現代は予測困難なVUCAの時代と言われており、いささか生きにくくなったように感じます。また、SNSの普及によりネガティブな情報が飛び込んでくることや、多様な考えに翻弄される場面もあることでしょう。そうしたストレスが負債となり心身を苦しめ、発散場所を求めて上記のトラブルに発展すると言えそうです。言い換えると、大人も子どもも“余裕がない状態”と考えられます。
とはいえ、ストレッサー(ストレスの原因)を完全に排除するのは現実的ではないため、コーピング(ストレス対処法)を身に付け、ストレスと上手く付き合っていくことが大切です。例えるなら、ウイルスの根絶を目指すのではなく、ウイルスが体内に入っても風邪をひかないように免疫力を高めると言ったところでしょうか。いずれにせよ、問題の発生前に焦点を当てた未然防止教育に心血を注ぐことが重要と言えそうです。
Q3.各生徒指導上の諸課題に対して、今後、学校にこんな支援がほしい、と思うことがあればお書きください。
やはり多かった「人的な問題」への声
- 時数の軽減措置や、例えば普通科の生徒がスムーズに単位制のスクールに通えるような制度や情報。単位制の学校でなくても、他のスクールの単位を認定できるようなシステムなど、高卒認定試験とはまた違う形での柔軟な対応。(50代、高等学校)
- とにかく人員。子どもや保護者とつながるために、余裕をもって個別に対応できる人員が必要。(30代、小学校)
- 発達障害の生徒が心を落ち着かせる場所を作りたいのですが、そこで生徒を見守る大人が足りません。サポートできる大人が必要です。(40代、中学校)
- 人員。(20代、中学校)
- 教員が足りない。魅力ある学校(職場や職業)にならないと、いつまでも教員不足は改善されない。(50代、小学校)
- 教員の数を増やしてほしいです。教職員(支援員など)ではなく、授業ができる教員を増やしてほしいです。(30代、小学校)
- 聞き取り調査を担任2名以上で行っているのですが、その人員がいないので、アンケートなどを取り同時多発的に聞き取り案件が起こると人員不足になる。休み時間に聞き取りをするが、その間も教員が見守ってないことで、二次被害が起こることもある。休み時間に一緒に遊んでくれる見守りボランティアがほしい。(40代、小学校)
- 特別支援学級の生徒が増えているので、単純により人手がほしいです。通常学級でも、学習の遅れが問題行動や不登校の要因なので、習熟度別学習で学ぶ機会であったり、スクールカウンセラーの数を増やして、生徒のアセスメントを複数で行えるようにしてほしいです。(30代、中学校)
専門家の介入・連携
- 法務少年支援センターのような非行・犯罪防止に専門的な知識や技術をもった方の相談窓口。(60代、中学校)
- 専門家と的確な見立てを共有し、エンパワメントされる具体性ある支援。(50代、教育委員会)
- 弁護士による法律相談。(40代、高等学校)
- 外部専門家の介入。(20代、高等学校)
- 不登校生徒への対応。(30代、高等学校)
- 教員の内線PHSが欲しい。(50代、高等学校)
- 第三者の相談機関・執行機関。(40代、小学校)
- 研修の時間。保護者対応出来る教員への優遇制度。(40代、中学校)
- 行政側に強く訴えたい。発達障害の生徒に関する医療的アプローチの積極的な介入。SNSを始めとした学校外の問題行動は学校の対象外であることを保護者に伝えてほしい。教育委員会にいえば何とかしてもらえると思っている保護者が多いことについての対応。(40代、中学校)
- SCやSSWが校内に常駐してほしい。不登校の要因として、「学校生活に対してやる気が出ない」「不安・抑うつ」など児童自身の心の課題が多く見られた。親や友達、先生に話しづらい自分の悩みや不安などを聞いてもらえる第三者として活用していきたい。親や教員とは異なる専門的視点で関わることができるが、実際はどちらも常駐ではないため、本当に必要な時に学校にいないことが多くなってしまっている。(40代、小学校)
- 警察の介入。(40代、高等学校)
Q4.各生徒指導上の諸課題に関連して、「こんな校内研修があったらいいな」と思うものがありましたらお書きください。
- 2023年に施行された撮影罪や盗撮等による学校での生徒指導事案の防止と対処法、スマホの取り扱い等について。(60代、中学校)
- アセスメントの深め方、具体のプランの導き方。(50代、教育委員会)
- 外部専門家の研修。(20代、高等学校)
- もともと不登校だった児童が、頑張って登校できるようになってきたのに、また休みがちになってきたときの関わり方。(30代、小学校)
- 研修もそうですが、実践力がある方を各校へ配置すること。(30代、高等学校)
- 成人に対する指導の仕方。(50代、高等学校)
- 支える生徒指導について、具体的事例を想定して学ぶ校内研修があると良いと思います。(30代、小学校)
- スクールローヤーの方を講師とした、法律の見地からの研修。(40代、小学校)
- 法律に関すること。(50代、小学校)
- 令和の生徒指導について学ぶ。生徒との話し方。聞き取り方。保護者との関係構築。外部とのつながり方。情報共有の方法。(40代、中学校)
- 合理的配慮・不登校支援。(40代、中学校)
- 何かと教員の責任や初期対応が求められ、教員の権利について行政側は何も教員に伝えないです。教員の法的権利について研修をして頂きたいです。(40代、中学校)
- いじめ・不登校を早期発見・早期解決を目指した組織的取り組みを進めるために①SC、SSWなどそれぞれの専門機関の仕事内容や役割を理解する研修、②いじめ、不登校を未然に防ぐ「課題予防」に焦点を当てた研修。このような研修があれば、教員が専門機関の有効な活用方法がわかる。また、個人として組織としても課題予防を共通認識することで、戦略的な学年・学級経営が行えると考える。(40代、小学校)
- OJT制度。新任の先生の負担が多すぎます。(30代、中学校)
- 保護者対応。(40代、高等学校)
- 生徒の心を掴み、発達を促す聞き取りと応対の技術。(40代、小学校)

摂南大学全学教育機構 助教
西村 晃一
あくまで個人の見解ですが、スクールカウンセラー(以下、SC)の常勤配置に賛成です。これは既に名古屋市内の全公立中学校で導入されており、幼稚園・小学校・高等学校・特別支援学校においても非常勤SCが配置されています*3。
日々、メンタルヘルスの問題は深刻化しており、子どもだけの問題ではありません。そこで働く教員や保護者たちの心理面も支え保持増進することは、巡り巡って子どもの心理面を支える上でも肝要であり、SCの常勤配置はその一助となり得るでしょう。
一方で、学校現場ができることには限界があります。そのため、提言したいのは「ストレスマネジメント」と「アンガーマネジメント」教育の推進です。近年、ストレスや怒りに関する研究は蓄積されており、理論と実践の往還が重要視されております。私も研修で各学校にお邪魔するのですが、特に子どもや保護者に向けたものには一定のニーズがあるようです。ラーニング・コンパス2030*4や第4期教育振興基本計画*5でもウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良い状態にあること)の向上を掲げていることから、地域社会全体が幸せや豊かさを感じられるものとなるための教育の在り方が求められます。





