この連載について
この連載では、広く、学校で働く教職員、保護者、地域の皆様に向けて、2022年12月に改訂された『生徒指導提要』や、国の施策、国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターで行っている調査研究などをもとに、生徒指導の基礎・基本をご紹介していきます。特に、2025年1月からは、いじめや不登校などの生徒指導上の諸課題をテーマに連載をします。
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この連載について
この連載では、広く、学校で働く教職員、保護者、地域の皆様に向けて、2022年12月に改訂された『生徒指導提要』や、国の施策、国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターで行っている調査研究などをもとに、生徒指導の基礎・基本をご紹介していきます。特に、2025年1月からは、いじめや不登校などの生徒指導上の諸課題をテーマに連載をします。
いじめ防止対策推進法(以下「法」とする。)の第13条により、各学校は、学校いじめ防止基本方針を作成することが義務付けられました。また、法第22条により、各学校に、「学校におけるいじめの防止等の対策のための組織」(以下「学校いじめ対策組織」とする。)を設置することも義務付けられました*1。今回と次回では、学校のいじめ対策が機能しているかを確認・点検する上で、そのポイントとなる、学校いじめ防止基本方針と学校いじめ対策組織にスポットを当てます。
今回は、主に、学校いじめ防止基本方針を取り上げ、その意義(なぜ法で求められるようになったのか)や、それは本来どのような役割を果たすべきものなのかについて述べます。いじめは社会総がかりでその防止に取り組むものであるため、今回と次回を通して、ぜひ、各学校の先生方だけでなく、子どもたちや保護者、地域の方々も、あらためて、ご自身が関係している学校で、学校いじめ防止基本方針と学校いじめ対策組織がきちんと機能しているか、確認・点検していただきたいと思います。
いじめ防止対策推進法では、国、地方公共団体、学校の設置者(教育委員会や学校法人等)、学校及び学校の教職員、保護者など、子どもに関わるありとあらゆるものを対象に、その立場等に応じて、いじめに対する責務(責任と義務)があるとしています。つまり、いじめ問題の責務は、社会全体で負うものということができます。
特に、学校及び学校の教職員の責務は、法第8条に以下の通り、規定されています。端的に述べれば、学校のいじめに対する責務とは、学校全体で、いじめの防止(例、いじめが起きないようにする日常的な取組や教育活動等)、早期発見(例、いじめに関するアンケートや個別面談、情報共有の組織体制等)及び対処(例、発生した後の迅速で適切な対応等)に取り組まなければならないというものです。
いじめ防止対策推進法第8条
学校及び学校の教職員は、基本理念にのっとり、当該学校に在籍する児童等の保護者、地域住民、児童相談所その他の関係者との連携を図りつつ、学校全体でいじめの防止及び早期発見に取り組むとともに、当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する。
それぞれの学校でのいじめの防止、早期発見及び対処について、具体的に、いじめをどのように捉え(法の定義)、どのような方針、年間計画のもとで、どういった取組を行うのか(例、いじめアンケートや教育相談の実施時期や回数、未然防止のための教育活動、発見時の安全確認と対応の指針、情報共有のフローチャート、関係する児童生徒の保護者への連絡等)等について、学校ごとに定めたものが学校いじめ防止基本方針になります。

『生徒指導提要』では、この学校いじめ防止基本方針の運用について「方針決定のプロセスにおいて保護者や地域の人々、児童生徒の意見を取り入れることや、策定された方針をホームページなどで公開し、保護者や地域の人々と方針を共有すること」、また、「基本方針の策定を通して、いじめ防止の活動を学校内にとどめず、地域社会を巻き込んだものにすること」とされています*2。
学校も保護者も地域の関係者も忙しい中で、どのように学校いじめ防止基本方針を皆で作成していくのか、そんなことはとても現実的ではないという声もあるかもしれません。確かに、学校が、協議や意見交換の場を設けて、保護者や地域の関係者に呼び掛けても、もしかすると参加者は少ないかもしれません。ですが、参加者がごく少なくても、いじめ対策を一緒に考えいくパートナーシップを築ける保護者や地域の関係者を少しずつ、粘り強く、増やしていくことが大切なのだと考えます。例えば、東京都教育委員会では「いじめについて学校と共に考える『保護者プログラム』」を作成し、取り組んでいます*3。
学校いじめ防止基本方針の社会的意義として、法で要請されているそれぞれの学校でのいじめの防止や早期発見、対処の在り方、取組について、学校は情報公開し、説明責任を果たすという観点があります。それは、決して学校を追い詰めるものではなく、学校にとっても、子どもにとっても、保護者にとっても有益な意味を持ちえます。
学校にとっては、全ての教職員に、学校いじめ防止基本方針を全校的な教育活動に組み込み、周知徹底を定期的に図ることで、いじめに対する意識の啓発や、共通理解・共通実践を促すことになります。
子どもにとっては、いじめとは何か(いじめ概念の拡大)を認識するとともに、学校はいじめを許さないものと明言していること、いじめを目撃した時に求められる行動、自分が被害にあったときにどうすればよいのか等を知ることができます。
保護者にとっては、自分の子どもを通わせている学校がいじめについてどのようなスタンスでどういった取組をしているのか、また、保護者に対してどのようなことが求められているのか、期待されているのか、さらに自分の子どもがいじめの被害者、または、加害者になったときに、学校とどのように対応していくことが大切であるのかをあらかじめ知ることができます。
つまり、学校いじめ防止基本方針の意義とは、学校に対する情報公開や説明責任にとどまるものではなく、学校のいじめの防止、早期発見及び対処について、保護者と地域の理解とともにパートナーシップを築き、地域全体でより実効的な取組にするように、定期的に確認・点検し、いじめ対策の充実・改善に資する手段といえるのです。
生徒指導の継続的な充実・改善には、実質的で質の高い(形骸化していない)PDCAサイクルが肝要です。そのためには、いじめに対する学校や教育委員会の主体的で高いモチベーションが必要になります。いじめ問題で苦慮した経験のある学校や教育委員会は、いじめ対策に高いモチベーションを有しているかもしれません。特に、そういう学校や教育委員会は、ぜひ学校いじめ防止基本方針をベースに、保護者や地域の関係者を巻き込んだ地域レベルでのPDCAサイクルを検討することも一考でしょう。


