この連載について
現代は「予測困難な時代」と呼ばれて久しいですが、学校教育を取り巻く状況も複雑化し、大小さまざまな変革が起こっています。本連載ではその中でも、高等学校の教職員に特化した教育ニュースを、報道だけでは見えてこない側面にもスポットを当てつつご紹介します! 教育現場の最前線に立つ教職員のみなさまにとって、お役に立つことはもちろん、今話題の・これから要注目になるであろう最新ニュースをお届けします。

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現代は「予測困難な時代」と呼ばれて久しいですが、学校教育を取り巻く状況も複雑化し、大小さまざまな変革が起こっています。本連載ではその中でも、高等学校の教職員に特化した教育ニュースを、報道だけでは見えてこない側面にもスポットを当てつつご紹介します! 教育現場の最前線に立つ教職員のみなさまにとって、お役に立つことはもちろん、今話題の・これから要注目になるであろう最新ニュースをお届けします。
政府は、公立高校入試における「単願制」の見直しに向けて動くようで、これが大きなニュースとなっています*1。
ご存じのように単願制とは、公立高校は一人1校しか受験できないとする制度です。ほとんどの都道府県で採用されており、入学意欲の高い生徒を選抜できるなどのメリットがあります。反面、合格確率を重視して志望校を変える“安全策”に走る受験生も多く、本来の志望校や実力に応じた学校を受験できないという弊害も指摘されてきました。実は私自身も高校受験時、似たような理由で志望校を変更した一人です。
今回の見直しにおいて、単願制に代えて導入が検討されているのが「デジタル併願性」です。受験生は複数の志望校に志望順位をつけて出願し、共通試験を受けた上で合格点に達した高校の中から、最も志望順位の高い高校が進学先として自動的に割り当てられます。単願制の良さを残しながら、受験生の進路選択の幅も広がるとして、期待を寄せる声は非常に大きいようです。
仮にこうした仕組みに高校入試制度が改革された場合、受験や志望校選択に対する生徒たちのマインドは確実に変化するでしょう。
単願制下の公立高校入試で重視されてきたのは、その高校に行けるかどうか、すなわち「合格可能性」でした。生徒本人はもとより、中学校の進路指導も、学習塾も、それを優先せざるを得なかったのです。
特に学校の数自体が少ない地方都市では、「学業優秀な子はA高校」「そうでない子はB高校」といった、偏差値輪切り型の進路選択が常態化していた部分もありました。筆者の友人・知人にも「それが地元の常識で、高校は『選ぶもの』という感覚があまりなかった」と述懐する人がたくさんいます。
しかし、この改革により高校選びの軸は「行ける学校」から「行きたい学校」へとシフトしていくはずです。打算的要素も含む「受け身の進学」から「能動的な進学」への転換であり、あるべき進路選択の姿や教育の本質に近づく動きと言えるでしょう。
また、中学受験においては、志望度合いや難易度、試験日程などを考慮した「戦略性」が重視されます。複数の志望校の中から、実際にどの学校を受験するかという組み合わせが大事です。これと近い思考が、高校受験にも広がると考えられます。

これらを総合して考えると、必然的に高校に求められるのは「選ばれる存在」になるための工夫です。学校として何を大切にするのかというメッセージ、そして生徒が「自分はそこへ行けば何ができるのか」というわくわく感を提示することが欠かせません。探究学習や地域連携など、各校ならではの教育を可視化することが、生徒の志望動機を形成する上で大きな要素となるでしょう。
私立校は以前から力を入れていた部分だと思いますが、今後は「公立だから」「普通科だから」学校が個性を出せない(出さなくてもよい)という時代ではなくなると思います。現に普通科改革の中でも学校の特色化は進んでいますし、地元を離れて地方の公立高校に進学する「地域みらい留学」への参画校などでは、すでにそうした活動に積極的です。合同説明会への参加や個性的な学校体験イベントの開催、在校生による魅力発信など、学校の認知拡大にも努めています。
大学進学を見据えたキャリア教育や進路サポートにも波及があるでしょう。高校選びにおいて志望理由が重視されるようになれば、同様の意識で大学進学や将来の進路について考える生徒が増えていくはず。自己理解と社会理解を深める教育活動が、今後ますます重要になりそうです。
就職を前提としたキャリアサポートにも、何らかの影響が出る可能性があります。現在の高卒就職は、受験における単願制と同じ「一人一社制」が基本です。しかしこれも、職業選択の自由の観点などから問題が指摘されており、今後、この見直しを求める声がさらに強まるかもしれませんね。
もちろん、制度の変化には戸惑いや不安もつきまといます。しかし視点を変えれば、これは「教育の本質に立ち返る好機」です。どうか先生方には、制度に翻弄されるのではなく、それを「生徒がよりよい人生を選択するための仕組み」に育てていく伴走者であってほしいと切に願います。
未来の高校選びが「どこに行けるか」ではなく、「どこで何を学び、どう生きるか」という問いに満ちたものになるならば、教育の風景はきっと、より豊かなものになるでしょう。


