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2025.08.27

第5回 授業が盛り上がらない。どうすれば…| 悩みを解決する「教育書」~あなたによく効く書方箋~

この連載について

悩める先生方からいただいた日々の仕事の中で困っていること・助けてほしいことなどのお悩みに対し、処方箋…書方箋として教育書を紹介します!
コンシェルジュは、教育書を読み漁り、その蔵書は1000冊以上!という現役小学校教師・ りょー先生こと杉本遼さん。
ただただ悩みに合った書籍を紹介するだけではなく、りょー先生がその本から学び、実践してきた経験を交えながら、解決への糸口を見つけ出していく、まったく新しい実践的ブックレビュー企画です!! 


また、本連載では読者の皆さまよりお悩みを受け付けております!
りょー先生に相談してみたい!という方はこちらのフォームよりご応募ください!!

 

◉今回の質問

「授業がなかなか盛り上がりません」

発問しても、「シーン…」と静まり返り、思うように子どもから反応が返ってきません。
質問への答えが一言で終わってしまいます。
発問のつくり方が良くないのかなって思っています。
子どもが「もっと考えたい!」と思えるようにするためには、どのように発問すればいいのでしょうか?

(まつださん 小学校教員 宮城県)

1 今回のテーマ

ご質問ありがとうございます。今回のテーマは、宮城県の小学校教員・まつださんからの質問です。発問しても子どもが反応しないと、「この授業、大丈夫かな…」と不安になりますよね。

私たち教師は、子どもたちが活発に意見を交わし、考えが広がっていく場面を願って授業をつくります。それなのに、返ってくるのが一言だけだと、「どう発問すればよかったんだろう?」と悩むのも自然なことです。
発問は単なる質問ではなく、子どもの思考を動かし、深めるための大事な仕掛けです。
だからこそ「授業が盛り上がらない」という悩みの裏には、発問の役割やつくり方へのヒントが隠れています。

今回は、すべての教科の発問づくりの土台となるような考え方が書かれた本を紹介し、実際の授業でどのように活用していけばいいのかを示していこうと思います。

悩みと疑問によく効く「書方箋」出しておきまーす!

 

2 書方箋

『子どもがつながる、学びが深まる「発問」』(学事出版)
竹川慎哉、 豊田ひさき 編著

『子どもがつながる、学びが深まる「発問」』で、豊田ひさき氏は、発問の本当の目的を「子どもが自分で問いを立て、考え、答えを見つけようとすること」に置いています。まだ問いの立て方を知らない子も多いため、教師が代わりに問いを投げることはありますが、それはあくまで子どもに問いの立て方や学び方を教えるための橋渡しにすぎません。
また、著者のひとりである玉城明子氏は、良い教材や解釈だけでは授業は成立せず、子どもの思考や態度を変える「発問研究」こそが授業を科学する核心であると指摘しています。つまり、授業を成立させるには「発問研究」が欠かせないというのです。

 

『有田和正の授業力アップ入門 ―授業がうまくなる十二章―』
(明治図書出版)有田和正 著

『有田和正の授業力アップ入門―授業がうまくなる十二章―』で、有田和正氏は、発問には「子どもを動かす力」が求められると述べています。子どもを動かす発問は、大きく3つに分類できます。

①思考を焦点化する発問(思考の方向を絞り、授業を効果的に進める)

②思考を拡散する発問(思考を広げ、発展させる)

③思考を深化する発問(比較、因果関係、条件の発見、否定発問などを通して考えを深める)

特に③の深化の発問である、固定化した考えを揺さぶり、新たな認識へ導く「否定発問」の有効性を強調しています。

 

『「発問」のデザイン』(明治図書出版)宗實直樹 著

『「発問」のデザイン』で、宗實直樹(むねざね・なおき)氏は、教科共通の「見方・考え方を働かせる発問」の3分類を示しています。これは、有田氏のいう「思考を深化する発問」をさらに丁寧に整理したものだと、私は捉えています。

①比較する(共通点・相違点を見つけて理解を深める)

②総合する(複数の視点を結びつけ、広い視野で理解を深める)

③関連づける(異なる事象や概念を結びつけ、新たな発見を促す)

また、子どもの発話に現れる「つなぎ言葉」(例:「たとえば」「つまり」「だったら」など)に敏感になり、それを足場に発問を組み立てることで、思考をさらに広げ深められると述べています。

 

『授業の原則 「呼応のドラマ」をつくる』(明治図書出版)
吉本均 著

『授業の原則 「呼応のドラマ」をつくる』で、吉本均氏は、授業を「呼応のドラマ」として成立させるためには、子どもを“ヤマ場”に追い込み、クライマックスを生み出す発問が不可欠であると述べています。

ヤマ場とは何か。それはドラマのクライマックスに相当する。ドラマにおけるクライマックスの生起には、次の三点が指摘されている。
・対立・矛盾・葛藤が生じる。
・観客の意表をつくアタック(攻撃)がかけられる。
・新しい発見に導かれる。
そうだとすれば、われわれの授業のヤマ場(クライマックス)とは、意見の対立・矛盾・分化が激化し、意見がゆさぶられ、追い込まれて、より高い、新たな共感・統一にいたる場のことだ、といえよう。

ヤマ場とは、意見の対立や矛盾、新しい発見が生まれる瞬間であり、吉本氏はこれによって授業は単なる情報伝達ではなく、子どもと教材が響き合う場になるとしています。そのために教師は、的確なタクトを振り、「なぜ?」「どうして?」と核心に迫る発問や、意図的に意見を対立・分化させ、統一へ導く発問を駆使し、学びを停滞させず発展させる必要があるというのです。

 

3  効能・効果(この本から得られる質問・悩みへのヒント)

発問が子どもの思考のスイッチ!

豊田ひさき氏・玉城明子氏からは、子どもが自ら問いを立てられるようになるまでの“橋渡し”としての発問の役割が学べます。授業中に「シーン…」となってしまったのは、教師の発問が子どもにとって“考えたいこと”になっていなかったから。または、発問が子どもの“代わり”に投げかける役割を果たしていなかったからだと考えられます。

有田和正氏・宗實直樹氏からは、「焦点化・拡散・深化」や「比較・総合・関連づけ」と整理された発問の機能・型を学ぶことができます。目的に応じて発問を使い分けることで、子どもが「考えたいこと」に近づけることができるでしょう。

教師が「考えさせたいこと」をそのまま発問にしても、子どもの心が動かされなければ反応は返ってきません。子どもが考えたいことを追求していけるよう、その過程に沿って発問することが理想です。

さらに吉本均氏からは、授業の“ヤマ場”を意図的につくる発問の視点が得られます。意見が対立・分化する場面をあえてつくり、考えを大きく拡散させます。次に、出てきた多様な考えを検討しながら、収束・統一へと導く発問を組み立てます。この「対立・分化による拡散」と「検討を通じた収束・統一」の流れによって、授業は盛り上がるだけでなく、子どもの考えが一層深まります。

こうした知見を生かすことで、発問は子どもの思考スイッチとなり、「もっと考えたい!」という空気が自然と教室に広がる授業をつくることができます。

 

4 用法・作用(りょー先生はこうしている!・こんな経験をした!)

【まつださんへの回答】

ヤマ場を意識して、授業を変える!

ヤマ場を意識して授業を進めていくと、教室の空気は一変します。
子ども同士の意見がぶつかり、矛盾やズレが見えてくる瞬間こそ、新しい発見のチャンスです。

私は道徳授業が好きで、研究と実践を積み重ねてきました。授業中のどこかで必ず“ヤマ場”をつくることを意識し、「このことについて、どう思うか?」「AかBか?」「なぜ、そう思うか?」といった発問を投げかけています。子どもの思考を揺さぶり、核心に迫る展開を心がけています。

具体的には以下のような例になります。

①対立・分化からの検討

「素直って、どういうこと?」をテーマに、イソップ物語『こなやとロバ』を教材にして考えました。

粉屋の親子2人がロバを市場に売りに歩いていると、途中で会った人々に意見を言われ、その意見に従うたびに状況が悪化していってしまう…という内容なのですが、「素直に人の言う通りにする2人をどう思う?」という発問に対し、「よいと思う」派と「う~ん」派に分かれて意見交換を行い、対立・分化を生かして話し合いました。

その中で「2人はどうすればいいか?」を考える場面が、授業の“ヤマ場”となりました。話し合いでは、「素直なことは大事だが、自分で考えて判断することが必要」「考え方は人それぞれ」という意見が出されました。

最終的に、テーマ「素直ってどういうこと?」に対しては「自分が納得できるか」を基準に、受け入れる → 納得する → 自分で決めて行動する、という流れが大切であると整理しました。素直さを大切にしつつ、自分の意思を持って生きる姿勢について考えを深めることができました。

②分析から対立・分化を生む

「自然とどのように関わる?」をテーマに、教材『一ふみ十年』(Gakken) を使って考えました。

あらすじとしては、チングルマの生えた草原に座り休んでいた親子が、立山で自然解説員をしている松井さんから、そこに座ってはいけないと優しく言われ、ふまれたチングルマが元のようになるのに十年以上かかることを教えられる話なのですが、まず「松井さんが高山植物チングルマのことを優しく教えてくれるのはなぜか?」という発問から話し合いを始めました。子どもたちからは、「怒ると来たくなくなる」「登山者の雰囲気を壊したくない」「高山植物を大事にしてほしい」といった意見が出されました。

その中で、「自然を守るなら立ち入り禁止にしたほうがよいのではないか」という意見が出て、「立ち入り禁止にすべきか」をめぐって賛成派・反対派に分かれた議論が授業の“ヤマ場”となりました。

話し合いを通して、自然を守るためには感情的に責めるのではなく、相手が納得できるように伝える関わり方が大切であること、そして自然は見えないところで人に支えられ、愛されている存在であることに気付くことができました。

 

5 まとめ

発問を通して子どもの思考を揺さぶる授業をデザイン!

今回紹介した4冊の本から共通して学べるのは、「発問は単なる質問ではなく、子どもの思考を動かし、広げ、深めるための“仕掛け”である」という視点です。

実際の授業でも、『こなやとロバ』では意見を対立・分化させることで、素直さと自分の意思のバランスについて考えるヤマ場が生まれました。『一ふみ十年』では、自然保護の在り方について賛否がぶつかり合い、互いの意見を検討しながら納得解を探る展開ができました。
これらの経験から、子どもが「もっと考えたい!」と思える授業には、子どもの“考えたいこと”に迫る発問と、意見が交わる場面づくりが欠かせないと実感します。

沈黙や短い返答も、見方を変えれば改善のきっかけです。今回の知見と実践の気づきを生かし、発問を通して子どもの思考を揺さぶる授業をデザインしていきましょう。

◉今回の書方箋
  • 書籍名:『子どもがつながる、学びが深まる「発問」 「個別最適化時代」の教師の問い』
  • 編著者:竹川慎哉、豊田ひさき
  • 出版社:学事出版

◆りょー先生からひとこと

『子どもがつながる、学びが深まる「発問」』は、ICT・AIによる個別最適化時代において、日本の授業文化が培ってきた「発問」の価値を再考する書です。子ども同士が相互に問い合い、応答し合う関係を生み出す発問づくりの理論と実践を提示し、学びを深める教師の役割を探ています。

  • 書籍名:『有田和正の授業力アップ入門―授業がうまくなる十二章―』
  • 著者:有田和正
  • 出版社:明治図書出版

◆りょー先生からひとこと

若い教師に向けて授業力向上の具体的な方法を示した入門書です。授業観の確立、教材開発の基礎技術、学級経営や学習意欲の高め方、子どもを見る力など、十二章にわたり実践的な知恵を凝縮。授業がもっと楽しく、成果が上がるためのエッセンスが詰まった一冊です。

 

  • 書籍名:『「発問」のデザイン 子どもの主体性を育む発想と技術』
  • 著者:宗實直樹
  • 出版社:明治図書出版

◆りょー先生からひとこと

子どもの主体性を引き出し、学びを深める発問づくりの理論と技術を体系的に解説した一冊です。発問の歴史や基礎基本から、「よい発問」の条件、分類・組織化の方法、見方・考え方を育てる問い、思考を揺さぶる発問までを網羅。現場ですぐに活用できる実践知を豊富に紹介しています。

 

  • 書籍名:『授業の原則 「呼応のドラマ」をつくる』
  • 著者:吉本均
  • 出版社:明治図書出版

◆りょー先生からひとこと

教師と子どもの相互作用を軸に授業を組み立てる方法を説いた一冊です。「まなざし」「語りかけ」「ねらいづけ」「指さし」「問いかけ」といった具体的技法を体系化し、教室での呼応をドラマのように紡ぎ出す実践知を紹介。授業改善のヒントが凝縮された、教育実践者必携の書です。

 

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