2025.05.07

第17回 学校徴収金の適切な役割分担|Web学校事務「事務職員と“学び”、事務職員の“学び”」

この連載について

全事研の役員となって事務職員の育成や成長ということを考える中で、学ぶことの重要性を強く認識しているところです。もちろん、体系的な研修制度も資質・能力を身に付ける上で大事ですが、まずは事務職員自身が主体的に学び、学んだことを生かして試行錯誤を繰り返していくことが必要だと感じています。「子どもの豊かな学びのためにも、事務職員として学び続けていきたい」。そんな思いで、私自身の経験から“学び”について考えたことを綴っていきます。

給食費を事務室に持ってくる生徒

 何年も前の話になりますが、事務室に自ら給食費等を持参する生徒がいました。当時の勤務校では、給食費・学年費(副教材費や生徒会費など)・旅行費(修学旅行と林間学校の費用)・PTA会費(年に1回)の口座振替が不能だった家庭に対して、現金での支払いを促す請求書を送っていました。そこには「学級担任に手渡す」旨を記載していましたが、その生徒は3年間ずっと事務室に持参してくれました。

 事務室で作成する請求書の封筒には何が入っているかは記載してありません。そのため、学級担任にその封筒を預ける際には、中身が給食費等の請求書であること知らせるとともに、さらに配慮して渡すことを必ず依頼しています。しかし、どれだけ配慮をしたとしても、受け取る生徒が気持ち良いものでないことは想像できます。そして、学校関係者なら分かると思いますが、受け取る生徒の多くは、その経験が1回や2回ではないのです。

公会計化も見据えた業務の役割分担

 中央教育審議会は「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)H29.12.22」において、「学校・教師が担う業務に係る3分類」を示しました。その中で「基本的には学校以外が担うべき業務」として「学校徴収金の徴収・管理」を挙げています。給食費の公会計化や、教材費等も含めて自治体が徴収している事例を挙げて、業務の役割分担の徹底を促しています。

 なお、学校が担わざるを得ない場合については、事務職員等に業務移譲するべきとも付記されています。これは、自治体や学校により状況は大きく違うことから、まずは教員の負担軽減を図りつつ、段階を追って進めていくことを示唆するという良い方向で解釈していますが、少なくとも教材費を含めた公会計化は一つの目指すべきゴールであることを示してほしかったとも思っています。

 ところで、私は20年以上前(共同実施すら行っていなかったし、働き方改革が話題に上がっていない頃)から、会計の適正化と保護者負担の軽減を目的に、勤務校で学校徴収金を担当していました。教員が携わる業務は、教材の選定の他には、家庭への請求書(口座振替不能者が対象)を生徒に手渡すことと、その集金を受け取ることだけです。私が担っていたのだから事務職員なら誰でもできるし、推奨しますと言いたいわけではありません。私は学校徴収金業務を担うために、ここに詳細は書きませんが手放した業務もあります。私を取り巻く環境には、それが許される組織文化があったからこそ実現できたのです。ぜひ、どうやったら誰にも過度な負担を強いない、適切な業務分担が図られていくかを、各現場で、各関係機関で、ともに考えていきたいですね。

 その取組みの一つが、学事出版さんが行っている「給食費に関する読者アンケート」です。どうぞ多くのみなさんにご協力いただけますようお願いいたします。子どもの豊かな学びを支援するためにも、適切な業務分担を見出していきましょう。

Personal is political

 先ほど書きましたが、請求書を受け取る生徒はその経験が複数回になることが多いのです。さらには、それは限られた生徒だけなのです。事務室に持参してくれた生徒が、どのような思いで担任に渡すのではなく、事務室への持参を選択していたかを聞くつもりも機会もありませんでしたが、対応するたびに、こんなシステムをなくしたいという思いを私は強くしていきました。お金のかからない公教育を実現していきたいと。

 少し前に放送されていた、学校や文部科学省が舞台となったテレビドラマ*1 で、「Personal is political」という言葉が度々登場していました。「個人的なことは政治的なこと」という意味で、個人的な経験と、社会や政治の構造との関係を明らかにしようとする言葉です。私たちは貧困や格差の拡大などを個人の問題として捉えてしまうこともありますが、そういった社会問題の多くは、政治的な要因に端を発するものなのだと言っています。たった一人でも辛い思いをしている生徒がいたら、そのシステムの見直しや変更を検討するきっかけとするべきであり、その主体は他の誰かや御上おかみ(政府や役所)だけではなく、私たち一人一人であるはずです。

 ところで、私は事務室に集金を持参してくれていた生徒の背筋が、いつもピンと伸びていたことを印象的に覚えています。きっとまっすぐに育ち、夢を叶えてくれているものと思います。

 

前田雄仁先生最新刊好評販売中!

前田先生からコメント

 事務職員の標準的な職務にも示された学校教育におけるICTについて、事務職員の視点から捉えた書籍『教育ICTがよくわかる本』の発行に携わらせていただきました。それぞれに現場で実践されている事務職員の素晴らしい取組も載っています。学校の現状や、取組の背景、うまくいったこと、うまくいかなかったこと、取組を通して実践者が学んだことなど、読み手にとって考えを広げてくれる本であると強く感じています。事務職員のみなさんの学びのきっかけとなること、そして、事務職員以外の方々には、事務職員との協働や、事務職員の活用を促進していただくきっかけとなることを期待しています。


この記事をシェアする
このエントリーをはてなブックマークに追加