2025.07.16

第19回 不登校の背景にある友人関係の問題|Web月刊生徒指導 「新しい生徒指導」の基礎基本 ー不登校編ー

この連載について

この連載では、広く、学校で働く教職員、保護者、地域の皆様に向けて、2022年12月に改訂された『生徒指導提要』や、国の施策、国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターで行っている調査研究などをもとに、生徒指導の基礎・基本をご紹介していきます。特に、2025年1月からは、いじめや不登校などの生徒指導上の諸課題をテーマに連載をします。

不登校の「きっかけ」に関する調査

 今回は、栃木県教育委員会が2025年3月に公表した「不登校に関する調査」を取り上げ、その結果をもとに、不登校の実態を探ります*1

 この調査に、筆者は、栃木県不登校総合対策検討委員会の委員長として関わりました。ですが、取り上げる理由は、自分が関わったからというだけではなく、児童生徒と保護者、教員に対して、大規模かつ多角的に調査を行い、不登校の実態にアプローチすることを試みているためです*2

 また、児童生徒への調査では、欠席意向(欠席したいと思ったことがある)の有無や実際の欠席頻度(欠席行動の程度)の自己評価に応じて、欠席意向があり実際に欠席をしている「欠席あり」群、欠席意向はあるが欠席はしていない「欠席意向あるが欠席なし」群、欠席意向もなく実際に欠席もしていない「欠席なし」群といった児童生徒をグループ別にして比較する等の工夫もなされていることも特徴の一つといえるでしょう。

 今回は、児童生徒と保護者、教員それぞれの「欠席のきっかけ」の解釈の類似点と相違点、児童生徒自身が考える欠席抑止の要因について、取り上げます。

児童生徒調査における不登校のきっかけ

 児童生徒調査における「学校を欠席したい」と思ったときのきっかけについて、傾向をまとめると以下の通りでした。

【「学校を欠席したい」と思ったときのきっかけ(児童生徒調査)】

〇きっかけについて、全校種において、「欠席あり」と「欠席意向あるが欠席なし」のいずれも「友達との関係」の回答割合が高い。小学校ではいじめ被害の回答割合も高い(欠席あり26.1%、欠席校あるが欠席なし23.1%)。その他に、勉強やクラスの雰囲気の回答割合も比較的高い。

〇全校種において、「欠席あり」と「欠席意向あるが欠席なし」のいずれもきっかけを「何か分からない」とする回答割合も高い。

〇全校種において、「欠席あり」の児童生徒は「身体の不調」の回答割合が高い。

図1 【児童生徒調査】「学校を欠席したい」と思ったときのきっかけ(小学校、欠席意向別)
(栃木県教育委員会(2025)「不登校に関する調査 集計結果」をもとに作成)
図2 【児童生徒調査】「学校を欠席したい」と思ったときのきっかけ(中学校、欠席意向別)
(栃木県教育委員会(2025)「不登校に関する調査 集計結果」をもとに作成)
図3 【児童生徒調査】「学校を欠席したい」と思ったときのきっかけ(高校、欠席意向別)
(栃木県教育委員会(2025)「不登校に関する調査 集計結果」をもとに作成)

 

保護者調査における不登校のきっかけ

 保護者調査における子どもが学校を休むようになった(休みがちになっている)きっかけについて、傾向をまとめると以下の通りでした。

【子どもが学校を休むようになった(休みがちになっている)きっかけ(保護者調査)】

〇きっかけについて、全校種において、「1か月以上」と「1か月未満」のいずれも共通しているのは「学校やクラスの雰囲気」や「友達との人間関係」、「身体の不調」、「先生との関係」の回答割合が高い。

図4  【保護者調査】子どもが学校を休むようになった(休みがちになっている)きっかけ(小学校、欠席期間別)
(栃木県教育委員会(2025)「不登校に関する調査 集計結果」をもとに作成)
図5  【保護者調査】子どもが学校を休むようになった(休みがちになっている)きっかけ(中学校、欠席期間別)
(栃木県教育委員会(2025)「不登校に関する調査 集計結果」をもとに作成)
図6  【保護者調査】子どもが学校を休むようになった(休みがちになっている)きっかけ(高校、欠席期間別)
(栃木県教育委員会(2025)「不登校に関する調査 集計結果」をもとに作成)

 

教員調査における不登校のきっかけ

教員調査による関わった児童生徒が学校を休むようになったきっかけについて、傾向をまとめると以下の通りでした。

【関わった児童生徒が学校を休むようになったきっかけ(教員調査)】

〇きっかけについて、全校種において、「友達との人間関係」の回答割合が高い。

〇「生活リズム」や「家族との関係」も全校種において比較的高い傾向である。

〇小学校と中学校では「勉強がわからない」、中学校と高校では「学校やクラスの雰囲気」の回答割合も比較的高い。

 

図7  【教員調査】関わった児童生徒が学校を休むようになったきっかけ(小学校)
(栃木県教育委員会(2025)「不登校に関する調査 集計結果」をもとに作成)
図8  【教員調査】関わった児童生徒が学校を休むようになったきっかけ(中学校)
(栃木県教育委員会(2025)「不登校に関する調査 集計結果」をもとに作成)
図9  【教員調査】関わった児童生徒が学校を休むようになったきっかけ(高校)
(栃木県教育委員会(2025)「不登校に関する調査 集計結果」をもとに作成)

各調査を比較して見えてくるもの

 欠席のきっかけとして、児童生徒調査、保護者調査及び教員調査それぞれで、共通していることは、友達との人間関係の回答割合が高かったということです。また、学校やクラスの雰囲気といった学習環境(学校風土)に関連することも、共通して、比較的高い回答割合でした。児童生徒にとっては、学校の人間関係が、学校での学びの継続にとっていかに重要な要因であるか、また、学校での人間関係に何かしらの問題や課題が生じた場合に、登校への大きな障壁になることがあらためて確認された結果といえるでしょう。

 一方で、各調査の回答に差異も見られました。児童生徒調査では、欠席のきっかけを「何か分からない」とする回答割合がいずれの校種においても高い結果でした。出欠席の課題を抱え、苦しんでいる児童生徒本人にとって、そのきっかけを言語化することには、難しさがあるのかもしれません。

 また、保護者調査では、欠席のきっかけを先生との関係とする回答も比較的高いものでした。他方、教員調査では、家族との関係生活リズムという家庭要因に関する回答結果が比較的高い結果でした。保護者調査と教員調査それぞれの回答傾向の違いは、いずれの調査が現実認識として、正しく、あるいは、間違っているかと捉えるよりも、不登校のきっかけについて、それぞれの立場で一定のバイアスがかかる可能性を示唆しており、学校や保護者、関係機関と連携・協働して不登校支援を考える上で、留意すべき視点を提供しているといえるでしょう。

 それでは、児童生徒自身は、欠席を減らせる要因をどのように考えているのでしょうか。児童生徒調査から、全校種で、安心して話せる友達の存在の回答割合が最も高い結果でした(小学校58.5%、中学校55.4%、高校43.4%)。

表1 不登校の予防の手がかり
(栃木県教育委員会(2025)「『不登校に関する調査結果報告書』(概要)」より転載)

 上記の結果から、不登校を未然防止するためには、教員の児童生徒との日常的な信頼関係づくり(担任以外の教員による関係づくりも含めて)を基盤に、児童生徒同士が良好な友人関係を築けるように、人間関係形成への支援がいかに重要であるかが読み取れる結果といえるでしょう。

 


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