この連載について
この連載では、広く、学校で働く教職員、保護者、地域の皆様に向けて、2022年12月に改訂された『生徒指導提要』や、国の施策、国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターで行っている調査研究などをもとに、生徒指導の基礎・基本をご紹介していきます。特に、2025年1月からは、いじめや不登校などの生徒指導上の諸課題をテーマに連載をします。

この連載について
この連載では、広く、学校で働く教職員、保護者、地域の皆様に向けて、2022年12月に改訂された『生徒指導提要』や、国の施策、国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターで行っている調査研究などをもとに、生徒指導の基礎・基本をご紹介していきます。特に、2025年1月からは、いじめや不登校などの生徒指導上の諸課題をテーマに連載をします。
今回は、前回に引き続き栃木県教育委員会の「不登校に関する調査」*1の結果を参照して、不登校の未然防止のために点検・確認が必要なポイントについて述べます。前回は、「不登校に関する調査」結果のうち、主に「欠席のきっかけ」に着目し、児童生徒調査、保護者調査及び教員調査それぞれで、共通していたこととして、友達との人間関係の回答割合が高かったことを示しました。また、学校やクラスの雰囲気といった学習環境(学校風土)に関連することも、共通して、比較的高い回答割合であったことを述べました。学校やクラスの雰囲気は、学校の人間関係が大きく影響していると考えられるため、友人との関係と学校風土は地続きの問題といえます。つまり、児童生徒にとっては、学校の人間関係が、学校での学びの継続にとっていかに重要な要因であるか、また、学校での人間関係に何かしらの問題や課題が生じた場合に、いかに登校への大きな障壁になるかが、あらためて明らかになりました。
今回は、児童生徒調査の中でも「学校生活で安心できると感じる状況」の結果に着目します。これは、学校生活における各場面を選択項目として列記し、児童生徒に安心できると感じる場面を選択させたものです。つまり、安心できると感じられない場面は、選択されないといえます。
図1~3に結果を示すとともに、その傾向をまとめると以下でした。特に、回答割合の低い項目(安心できる場面として選択されなかった項目)に着目しました。
〇小学校では、欠席意向(欠席したいという思い)の有無に関わらず、「文化的行事」について、安心できるとする割合が最も低い。
〇中学校と高校では、欠席意向の有無に関わらず、「委員会・係活動」について、安心できるとする回答割合が最も低い。
〇全校種で、欠席意向の有無に関わらず、「学活や総合の授業」と「人間関係(いじめ以外)」について、安心できるとする回答割合が比較的低い。
〇中学校では、「教科の授業」について、安心できるとする回答割合が低い。
この結果は、欠席意向もなく欠席行動もない児童生徒(「欠席なし」群)、欠席意向はあるが欠席行動には至っていない児童生徒(「欠席意向あるが欠席なし」群)、欠席意向もあり欠席行動もある児童生徒(「欠席あり」群)のいずれのグループについても、集団を通しての学習の場面に対して、安心を感じづらい傾向にあることが示唆されたものといえるでしょう。
一方で、全校種とも、「休み時間や放課後の場面」について、安心できる状況とした回答割合が高い傾向でした。筆者は、「欠席意向あるが欠席なし」群や「欠席あり」群の児童生徒は、教師のコントロールの及びにくい、休み時間や放課後こそが、人間関係で嫌な思いをしやすいのではないか、安心を感じにくいのではないかと推測していました。ですが、結果は、上記のように、集団を通した学習活動が、安心できる場面として回答されない結果でした。
上記の結果を受けて、果たして、学校は、集団を通した学びを学校の教育活動から極力、排除すべきなのでしょうか。もちろん、そのようなことは、あってはならないでしょう。
現在、学校教育では、「主体的・対話的で深い学び」が推進されています*2。これからの時代を生きる児童生徒には、言語能力や情報活用能力、問題発見・解決能力といった学習の基盤となる資質・能力をはじめ、多様な他者と協働できる力の育成が求められています。
そのためには、「主体的・対話的で深い学び」、とりわけ、不登校の未然防止の観点からは、集団を通した学びの充実・改善が重要で、それを学校の授業の中で実現していくために、教師には、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実していくことのできる、より高度な専門性が求められます*3。中でも、最も肝要であるのは、教師による児童生徒との信頼関係形成を基盤に、学校の教育活動を通して、児童生徒同士の人間関係づくりができる教師の生徒指導の力量形成を図ることといえるでしょう。


