この連載について
子どもが楽しく学べる文房具、学校で働く方々の仕事がはかどる事務用品。この連載では、思わず人に教えたくなるような、学校生活を豊かにする文房具を紹介していきます。執筆者は数多くの文房具を見聞き、蒐集し、さまざまな媒体でその魅力を発信し続けている文房具プレゼンターのふじいなおみさんです!
数々のモノに触れてきたふじいさんだからこそ知っている、学校で使える文房具の世界をぜひお楽しみください!
大人が使う筆記具のほとんどはボールペンではないでしょうか? ボールペンは「書くために使う」道具ですが、細かな種類に分けることができて、得意なことや苦手なこと、個性があるものです。
今回は、筆記具として広い世代に使用されているボールペンの世界の扉を開いていきましょう。きっとみなさんのボールペンへの見方(選び方)が変わるはずです。
ボールペンを分類するときに一番大きな違いとされるのはインクの違いです。それぞれの特徴を見ていきましょう。
ボールペンインクの溶媒(インクをつくるのに使う液体)は大きく3つに分けることができます。
【油性】
有機溶剤やアルコール
【ゲル】
水+粘度を上げるためのもの(増粘剤)
【水性】
水
また、色の素は2つに分けられます。
【染料】
溶媒に溶ける色の素。色を混ぜて新しい色を作るのが簡単な半面、筆記後に溶媒がかかるとにじんでしまいます。
【顔料】
粒子が溶媒に溶けずに漂っている色の素。紙の上に乗せられた後、インクが乾くと、粒子が紙の上に粒子のまま残るので、溶媒に再度触れてもにじみづらく、色あせもしづらいので長期保存するものに向いています。
この溶媒と色の素の組み合わせによってインクができあがっています。
油性インクはボールペンが普及した頃からあるインクで、ペン先の回転するボールに付着したインクを紙に押し当てたときに転写されることで筆記できるようになっています。
ドロッとしていることが多く、書き心地に重さがありますが、2000年代に入ってから、低粘度油性インクが開発され、書き心地が軽く、滑らかに書ける商品も市場に増えてきました(三菱鉛筆のジェットストリームが先駆けと言われています)。
色のバリエーションが少なく、鮮やかな色を出しづらいというデメリットもありますが、筆圧に強いので、事務のお仕事をされている方には欠かせない複写伝票(領収書や宅配便の伝票など)を書く時には油性のボールペンの出番です。
例:ジェットストリーム(三菱鉛筆)、アクロボール(パイロット)、ブレンU(ゼブラ)
ゲルインクの「ゲル」とは高校の化学の時間に習う「力がかかると液体になり、静かな時には固体として存在する」状態のことです。ボールが回転すると力が発生しボール周辺のインクが液体となります。そして、ボールの回転により紙の上に押し当てられ、紙の上で再度固体の状態となることで書くことができます。
細い線を書くことができ、鮮やかな色のペンも多いのですが、インクの減りが早いという欠点があります。
また、ゲルは顔料を入れてもインクの中で偏ることがないので、写真の上に文字が書ける・メタリックな色合いを表現できる、といった一味違う特徴を持った「楽しむことができるボールペン」も多く存在します。
例:エナージェル(ぺんてる)、サラサクリップ(ゼブラ)、ユニボール ワン(三菱鉛筆)
水性インクは粘度の低い状態になっていて、ボールが紙に触れることにより毛細管現象(力を加えなくてもインクが隙間の狭い方へひっぱられる現象)が起こってインクが紙の上に乗せられます。
ボールを回転させなくてもインクが出てくるので力をかけずにスラスラと書くことができる反面、にじみやすさがあり、特に染料を使ったインクの場合は、水分がかかると乾いた後でもにじんでしまうことがあります。
例:Vコーン(パイロット)、ボールPentel(ぺんてる)
以下に各インクの主な特徴をまとめてみましたので、選ぶ際の参考にしてみてください。
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2025年12月末にパイロットよりゲルインキボールペン「ジュースプラス」が発売になりました。
私が中高生だった頃は、授業・部活・塾と全力で毎日を過ごしていたのですが、それは現代の学生の皆さんも変わらない、むしろもっと忙しくなっているように感じます。このボールペンはそんな「忙しい学生の毎日に寄り添う」ために、かすれずスムーズに筆記ができる・教科書やノートの狭いスペースにでも書き込めるというストレスのかからない仕様で、さらに、手頃に購入できる価格(税込165円)であることもポイントです。

パイロットが開発した独自のペン先に「シナジーチップ」と呼ばれるものがあります。これはインクをペン先に安定して供給できるため、細書きでも滑らかに筆記ができるという特長を持っています。

この「シナジーチップ」ですが、普段使いだけれど書き心地にこだわりのある人が使う、少し価格帯が上の「ジュースアップ(税込275円)」というペンに搭載されているのですが、なんと「ジュースプラス」にもそれと同じ「シナジーチップ」が搭載されているのです。
同じ芯が使われている二つのボールペンを使い比べてみたところ、一番の違いは重さだと感じました。
ジュースアップはボディに少し重みがあります。ペン先に金属のパーツがついていて、そのおかげで筆記をするときに安定性が生まれます。
一方、ジュースプラスは全体がプラスチックでできたボディで、軽さがあり、例えば、進みの早い授業時に大切なメモをとるため、といった際にスムーズにペンを走らせることができます。実際に筆者が書き比べたときの感覚では、ジュースプラスの方が早く文字を書きとることができました。
筆者ならば記者発表会のようなときに、学生さんなら授業のポイントを書き込むときに、自分が読むためのメモ書きをするときに重宝がられると思います。もちろんゆっくり書くこともできますので、きれいな授業ノートを作るときにも役立ちます。
一方、ジュースアップでも走り書きをすることはできますが、ジュースプラスほどの速度は出せませんでした。
逆に重みがあるおかげで文字の「トメ」「ハネ」をしっかりと表現することができるので、例えば、仕事の中で書類を書くときや、資料に添えるメモ書きなど丁寧に文字を書きたいときに使いたいと感じました。
今回、比較を行ったことで、ボールペンにも適材適所があると強く感じました。違いや、想定されているシーンを考えてみるのも、自分の手に馴染む筆記具を見つけるポイントとなりそうです。
ボールペンを選ぶ観点は人それぞれ違います。最初に説明したインクの種類の他に、「握る部分の素材や柔らかさ」「重心がペン先に近いのか遠いのか」「ノック式なのかキャップ式なのか、はたまたひねって芯を出すのか」「インクの乾く速さ」など、ボールペンにも個性がたくさんあります。
手書きが減っている世の中ではありますが、無くなったわけではありません。だからこそ、少なくなった筆記をする時間を快適にするために、あなたに合ったボールペンを選んでみませんか?
参考文献:『文房具語辞典』(高畑正幸・著/誠文堂新光社)
special thanks:他故壁氏さん
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(上下ともに)©パイロットコーポレーション
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