この連載について
①教職員の生活を支えるための〈給与規程〉、②子どもの学習環境を支えるための〈就学支援〉、③教育活動や学校運営を支えるための〈学校財務〉、この3領域を「教育財政領域」と定義し、これらにかかわる法令や理念の解説と合わせて実践紹介などもしていきます。若手教職員をメインターゲットとして、ライト&フランクな連載にしたいと考えています。なお、本連載は「ヤナギサワ事務主査と考える──学校とお金の話」(全24回)の続編となります。
9月もおわり、秋ですね。……いや夏ですよね。まだ暑いですもんね。でも日本では「9月から11月」を「秋」というそうですよ。よく暦の上では──とかいいますね。それだと二十四節気で「立秋」=8月から秋のはじまりです。もう「暦上」と「実態」の乖離がすごいですよね。生活保護も「制度」と「実態」の乖離があるんです。今月はそんな話から生活保護を考えましょう。
前回(第17回 就学支援(8)──生活保護:関係法令のポイント)は、「保護の
読んで字のごとくですが、この制度を必要なひとがどれだけ利用できているのか──いいかたを変えれば「制度の捕捉性」はどのくらい機能しているのか、という問題です。もっと具体的にいうなら、厚生労働大臣が決めた「最低生活費」以下で生活しているひと=「生活保護制度」利用者、となっているのかという話です。
さて、日本における生活保護の捕捉率はどの程度だと思いますか? 必要なひとすべてに届いていると思う場合は100%として……じつは20%*1 程度といわれています。80%は制度が利用できる状態にもかかわらず、利用していない=利用可能なひとのうち5人に1人しか利用していません。
ちなみに諸外国と比べるとその低さがよくわかります。たとえば、アメリカ82%、ドイツ64%、イギリス62%、フランス50%だそうです。どうして低いのでしょうか? 少しワークショップを入れてみたいところではありますね。──制度を知らないひとが多いから、──知っているけど申請に行く時間がないから、──時間はあるけど社会のバッシングがこわい、──自分なんかが利用してもいいのか、などでしょうか。
このことに関しては、就学援助も同様の課題があります。周知不足やスティグマ*2 、後ろめたさについては、教職員としても考えていくべきことだし、今後の連載で扱っていこうと思います。
生活保護には種類があります。「いちご味」とか「りんご味」とかでは、もちろんありません。保護(扶助)が可能な種類を法律で8つ定めています(生活保護法第11条)。
一般的なのが「生活扶助」(同法同条第1号)です。生活保護といったら「生活扶助」という感じくらいスタンダードでベースなものになります。「衣」「食」と「日常生活」を保護するものです。「住」の部分は、「住宅扶助」(第3号)が担当します。病院へ行くための「医療扶助」(第4号)、介護が必要な場合は「介護扶助」(第5号)、出産時には「出産扶助」(第6号)、「葬祭扶助」(第8号)もあります。
そして、うえであげなかった残りの2つが教職員にとって重要な内容となります。“義務教育”期間にかかる「教科書その他の学用品」「通学用品」「学校給食」「その他義務教育に(‥)必要なもの」を扶助する「教育扶助」(第2号)です。もうひとつが、「生業扶助」(第7号)──え? 生業? ちょっとふしぎですよね。生活を立てるために就職や自立を扶助するものです。それがなぜ教職員に重要なのかというと、高等学校や高等専門学校の費用も扶助されるからです。
このほかに定期的な支出ではない入学準備金(制服の購入など)などを扶助する「一時扶助」もあります。次回からは、これらの重要な扶助について考えていきましょう。
学校と地域をつなぐ、事務職員のはじめの一歩。
コミュニティ・スクールの設置率が高まるなか、地域協働領域において事務職員の専門性をどのように発揮できるのか。全国の様々な実践を集め、地域協働を事務職員の専門的職務として構築する「学校事務ベーシック」シリーズ第6弾。
学校運営協議会制度が法制化されてから20年余りが経過し、コミュニティ・スクールは全国の公立学校に広がりつつあります。一方で、学校運営協議会をどのように機能させるのか、地域学校協働活動とどうつなげるのか、そこに事務職員がどのように関わるのかは、なお発展途上の課題です。
本書では、第1章で地域協働に関する政策・法制度、学校運営協議会と地域学校協働活動の関係、事務職員の職務と役割を整理。そのうえで第2章以降では、学校運営協議会、地域学校協働活動、地域コーディネーターとの協働、共同学校事務室、特別支援学校、高等学校、社会教育に関する全国の実践を紹介します。
総務・財務、情報管理、連絡調整、広報、会議運営など、事務職員が日常業務で培ってきた専門性は、学校と地域をつなぎ、地域とともにある学校づくりを支える力になります。地域協働は「あの人だからできる」特別な実践ではなく、「事務職員がいるからできる」学校運営の一部として位置づけることができます。
地域協働について学びたい事務職員、勤務校のコミュニティ・スクールをさらに充実させたい管理職・地域連携担当教職員、教育委員会職員、地域学校協働活動に関わる方に、自校・自地域で最初の一歩を踏み出すための視点とヒントを届ける一冊です。
特別支援教育はすべての子どもの学びを支える「視点」であり、「原点」である。事務職員のための特別支援教育入門書
すべての人の「学ぶ権利」を保障するため、学校事務職員は特別支援教育にどのように関わることができるのか。本書では、特別支援教育を「専門領域」としてではなく、「学校運営全体に広がる視点」として捉え、制度や障害理解の基礎から、就学支援、学校財務、施設・設備、ICT、学校安全、地域協働まで、学校事務の職務を通して特別支援教育を支える実践を体系的に紹介する。学校事務職員が「すべての子どもの学びを支える」という視点を身に付けるための入門書。学校事務ベーシックシリーズ第7弾。
特別支援教育は、一部の専門家だけのものではありません。障害のある子どもを含め、すべての子どもの学びを支えるために、学校全体で理解し取り組むべき教育活動と言えます。
第1章では、特別支援教育の制度や考え方、社会モデルや合理的配慮などの基本を整理。第2章では、就学支援、学校財務、施設設備、教育ICT、学校安全、地域協働といった学校事務の主要領域と特別支援教育とのつながりを、第3章では、教育ICT・学校安全・地域協働といった広がる事務職員の職務領域を手がかりに、全国の実践事例を通して紹介します。さらに第4章では、色覚、多様な言語環境、手話などを題材に、特別支援教育の視点を学校全体へ広げるためのヒントを提示します。
「特別支援教育は視点である」という考え方を軸に、学校事務職員が日々の業務を通して、子ども一人ひとりの学びを支えるための入門書です。