2026.06.30

第15回 就学支援(6)──「貧困」とはナニカ?|ヤナギサワ事務主幹と考える学校とお金の話

この連載について

①教職員の生活を支えるための〈給与規程〉、②子どもの学習環境を支えるための〈就学支援〉、③教育活動や学校運営を支えるための〈学校財務〉、この3領域を「教育財政領域」と定義し、これらにかかわる法令や理念の解説と合わせて実践紹介などもしていきます。若手教職員をメインターゲットとして、ライト&フランクな連載にしたいと考えています。なお、本連載は「ヤナギサワ事務主査と考える──学校とお金の話」(全24回)の続編となります。

  前回(第14回 就学支援(5)──教職員として理解する努力)、「『支援』や『貧困』といわれても……、正直なところ理解ができない。そんなひともいるでしょうし、そんなホンネがあってもいい」ということを前提に、「たとえ理解できなくても『教職員として理解』する努力が必要」と書きました。「支援」ということばは、このタイトルでも使っているように「就学=学校で学ぶこと」を支え、援助する、という一元的な理解でだいじょうぶです(もしかしたら、もっと深い“ナニカ”があるかもしれませんけど、ボクは説明できません)。 しかし、「貧困」は深いです。スピンオフ企画「『貧困』とはナニカ? 機会があったら書きます」なんて前回いいましたが、「理解する努力」を支援するためにも、Together──Let's study about it.♪(アレ、どこかで聞いたな~このかけ声)。

多元的な「貧困」概念

 さて、ちょっと難しい話をしていきますね。最終的に「貧困」は一元的ではなく、多元的な概念なんだ──ということを理解し、社会でそれをなくしていこうってことが伝わればOKです。

 就学支援の初回(第3回 就学支援(1)──就学支援制度の射程と「3つのエン」)で説明したように、生活困窮者が失うエンのひとつが「円」(お金)でした。それは、経済的貧困と表現できますね。ほかにも、「子どもの貧困」を考える視点*1があります。たとえば、身体的貧困(健康問題:医療費が気がかりで虫歯を治せないことなど)、家庭的貧困(保護者の就労問題:「孤育て」現象から生じるかかわりの希薄化など)、精神的貧困(自己肯定感の問題:家庭の教育費支出が少ないほど低くなる傾向にあるなど)、社会的貧困(居場所の問題:学校行事や部活動に参加できないことなど)があげられています。

 そして、それらは医療費や教育費などといった費用負担に起因していますし、保護者の就労収入という根本的な影響もあるでしょう。そのため、「複合的な困難・累積する不利」として、さまざまな問題の中心には「経済的困窮」がある*2といわれています。また、「孤育て」や「居場所」などというワードからは、やはり「縁」や「援」も失われていく可能性を感じます(第3回「3つのエン」の復習)。

 

個人の問題ではなく社会の問題であるという視点

「『貧困』状態に至る背景には、『五重の排除』がある」*3という考えがあります。その第一に「教育課程からの排除」があり、前述した5つの貧困状態とも関係していきます。それは最終的に、家庭や社会の問題から不登校を選択し、そこから精神的・身体的困難をかかえ、「自分自身からの排除」(自己肯定感の停滞)につながるという、自己責任論を生成します。

 しかし、そうなってしまうのは学校に行かなかった自分自身の責任なんでしょうか? あえて「排除」ということばをつかっている意味もそこにあるでしょう。〈「貧困の問題≠個人の問題」∴社会の問題〉という社会学的な視点で捉えていくことがたいせつだと考えます。また、貧困状態を「相対的剥奪」(そのひとの生きている社会で通常期待されていることができない状態)や「潜在能力の欠乏」(そのひとが望むことの実現を妨げられている状態)と定義*4する場合もあります。

──このように考えていくと自己責任論を「排除」できそうじゃないですか?

 


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「特別支援教育は視点である」という考え方を軸に、学校事務職員が日々の業務を通して、子ども一人ひとりの学びを支えるための入門書です。


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